サイリウム(Psyllium)は、オオバコ属の植物の種子の外皮を粉末にしたものです。その最大の特徴は、「水溶性食物繊維が極めて豊富であること」と、「水を含むと数十倍に膨らみ、ゼリー状になること」にあります。

潰瘍性大腸炎(UC)という「お腹の機嫌」に左右される人生において、なぜこの「ゼリー状の性質」が救いになるのか、その理由を詳しく紐解きます。


1. 「下痢」と「便秘」の両方をなだめる、便性の調整力

UC患者の多くが悩まされるのが、便の状態が安定しないことです。サイリウムは、その驚異的な保水力で、便を「理想的な硬さ」にデザインしてくれます。

  • 下痢のとき: 過剰な水分をサイリウムが抱え込み、ゼリー状に固めることで、泥状便や水様便を適度な形に整えます。これにより、急な便意の切迫感を和らげてくれます。

  • 便秘のとき: 便に水分を与えて柔らかくし、カサを増やすことで、スムーズな排便を促します。

  • 腸壁の保護: ゼリー状になったサイリウムは、炎症を起こして過敏になった腸の粘膜を物理的に優しくコーティングし、食べ物のカスなどの刺激から守ってくれる役割も果たします。


2. 善玉菌の「エサ」となり、酪酸を作り出す

サイリウムは、腸内細菌によって発酵され、**短鎖脂肪酸(特に酪酸)**を作り出す材料になります。

  • 腸のエネルギー源: 酪酸は、大腸の粘膜細胞が活動するための主要なエネルギー源です。UC患者はこの酪酸を作る力が弱まっていることが多いため、サイリウムで材料を補給することは、腸の修復力を内側から高めることに直結します。

  • 炎症を抑える環境作り: 酪酸が増えることで腸内が弱酸性に保たれ、悪玉菌の増殖が抑えられます。これは、寛解状態を長く維持するための「土台作り」そのものです。


3. 【実践】南部鉄器と炊飯習慣を活かした「サイリウム・ルーティン」

サイリウムは非常に個性が強い食材ですが、これまでの私たちの習慣に組み込むことで、より効果的に、かつ美味しく取り入れることができます。

① 南部鉄器の白湯で「じっくり膨らませる」

サイリウムを飲む際に最も大切なのは、**「十分な水分と一緒に摂ること」**です。水分が足りないと、逆にお腹の中で固まって負担をかけてしまいます。

  • 実践: 南部鉄器で沸かした、鉄分たっぷりのまろやかな白湯。これでサイリウムを溶かして飲みます。白湯を使うことでお腹を冷やさず、サイリウムが滑らかに膨らみます。

② 炊きたてご飯との「時間差」戦略

サイリウムは満腹感を与えるため、食事の直前に飲むと、せっかくの美味しい炊きたてご飯が入らなくなってしまうことがあります。

  • 私流: 私は、炊飯器のスイッチを入れてから、「炊飯中の30分散歩」に出る直前に、少量のサイリウムを白湯で飲んでいます。散歩中に腸の中でサイリウムがゆっくりと膨らみ、帰宅してご飯を食べる頃には、腸が「受け入れ体制」を整えてくれている状態になります。

③ ジオ・プロダクトで「とろみ付け」ハック

サイリウムは加熱すると「とろみ」がつきます。

  • 実践: ジオ・プロダクトの鍋で作るスープや、しいたけ・昆布の出汁。これに少量のサイリウムを加えることで、片栗粉の代わりの「とろみ」として活用できます。レンジを使わず、弱火でじっくり火を通すことで、自然で優しい口当たりのおかずが完成します。


4. 注意点:UC患者が絶対に守るべき「スモールステップ」

サイリウムは強力な味方ですが、使い勝手を間違えると逆効果になる「劇薬」のような側面もあります。

  • 「ごく少量」から始める: いきなり大さじ1杯などを飲むと、お腹が張って苦しくなったり、逆に腹痛を招くことがあります。まずはティースプーン1/4程度から始め、数日かけてお腹の様子を見ながら増やしてください。

  • 活動期(再燃期)は控える: 腸の炎症が激しく、狭窄(狭くなっている場所)の可能性がある時期は、サイリウムが詰まりの原因になることもあります。活動期は主治医と相談し、基本的には「調子が良い時の維持」のために使いましょう。

  • 水分、水分、とにかく水分: サイリウムを摂る際は、コップ一杯の白湯だけでなく、その前後にも意識的に南部鉄器の水を飲みましょう。


おわりに:自分の「お腹の形」を自分で守る

南部鉄器、散歩、ジオ・プロダクト、そして炊きたてのご飯。 私たちの丁寧な暮らしの中にサイリウムを加えることは、腸という繊細な回路に「潤滑油」を差すような作業です。

30代、無理が効かなくなってきたからこそ、力技ではなく、こうした賢いツールを使って自分の体をマネジメントしていく。その積み重ねが、何にも代えがたい「安心」という果実をもたらしてくれます。

今夜、お米を研いだ後のひとときに、新しい習慣として「サイリウム一杯の白湯」を試してみませんか?