納豆、お味噌汁……日本の伝統的な食生活には、発酵の力が息づいています。

潰瘍性大腸炎(UC)という持病と向き合う中で、私がたどり着いた「セルフケアの最終回答」の一つが、自家製のぬか漬けです。

一見すると「お年寄りの趣味」のように思えるかもしれませんが、実は忙しい30代男性のQOL(生活の質)を底上げし、腸内環境を劇的に整えてくれる、極めて合理的な習慣なのです。


1. 植物性乳酸菌の「生命力」を味方につける

私たちがぬか漬けを食べる最大の理由は、そこに潜む植物性乳酸菌の圧倒的な強さにあります。

  • 胃酸に負けない: ヨーグルトなどの動物性乳酸菌に比べ、ぬか床の中で過酷な環境を生き抜いた植物性乳酸菌は、生きたまま腸に届きやすいと言われています。

  • 腸内細菌の多様性: ぬか床には1gあたり数億個もの乳酸菌や酵母が存在します。これを取り入れることで、UC患者にとって極めて重要な「腸内細菌の多様性」を高めるサポートをしてくれます。


2. 「ぬか」が野菜をサプリメントに変える

ぬか漬けは、ただの「塩味の野菜」ではありません。

米ぬかに含まれる豊富な栄養素が、漬けている間に野菜へと移っていきます。

  • ビタミンB1の宝庫: ぬかに漬けることで、野菜に含まれるビタミンB1の量は数倍から、時には10倍以上にまで跳ね上がります。疲労回復を助け、代謝をスムーズにしてくれるビタミンB1は、仕事に忙しい30代男性の強い味方です。

  • 食物繊維を柔らかく: ぬか床の酵素が野菜の細胞を分解するため、生のまま食べるよりも消化が良くなります。お腹に負担をかけたくない私たちにとって、これは見逃せないメリットです。


3. ぬか漬けを楽しむための2つの鉄則

発酵の力は偉大ですが、UC患者としては「塩分」と「刺激」のコントロールが欠かせません。

  • ① 塩分をしっかり落として食べる: ぬか漬けは保存食であるため、塩分が高くなりがちです。食べる直前に水でサッと洗うのはもちろん、少し長めに水にさらして「塩抜き」をすることで、腸への刺激を最小限に抑えられます。

  • ② 「皮」への配慮: きゅうりや茄子など、皮が硬いものは消化の負担になることがあります。再燃が不安な時期は、皮を少し剥いてから漬けたり、細かく刻んだりして工夫するのが私流のセルフケアです。


4. ぬか床を育てることは、自分を慈しむこと

「毎日かき混ぜるのが大変そう」というイメージがあるかもしれませんが、最近は冷蔵庫で保管できる「専用容器」や、最初から熟成された「出来合いのぬか床」も簡単に手に入ります。

毎日、帰宅して手を洗い、ぬか床の中に手を沈める。 ひんやりとした感触とともに、中の野菜を取り出す。

この「自分の手で食べ物を育て、管理している」という感覚は、病気に振り回されがちな日々に、確かな「コントロール感」を取り戻してくれます。

自分の腸の状態を気に掛けるように、ぬか床の状態を気に掛ける。この二つは、私の中で深くつながっています。


おわりに:100年続く知恵を、今夜の食卓に

南部鉄器で沸かしたお湯、こだわりのゆで卵、そして自家製のぬか漬け。

私の食卓は、派手さはないけれど、確実に「私の命」を支えてくれるものたちで溢れています。

ぬか床から取り出したばかりの、瑞々しいきゅうりや大根。

その一切れ一切れに宿る乳酸菌たちが、私のお腹の中で今日も静かに働いてくれています。

あなたも、小さな容器から「発酵生活」を始めてみませんか?

その一口が、未来の健やかな腸を作る、大切な一歩になるはずです。