なぜ私は「鳥刺し」を食べないのか。潰瘍性大腸炎のリスクを最小限にするための決断。
居酒屋や会食の席で、美味しそうにテーブルに並ぶ「鳥刺し」や「鶏のタタキ」。
鶏肉のおいしさ・新鮮さを売りにしたお店では、魅力的なメニューの一つとして紹介されることも多い料理です。
しかし、潰瘍性大腸炎(UC)と診断されている私は、「鳥刺し」や「鶏のタタキ」といった「鶏の生食」を完全に生活から排除しています。
それは、単なる好き嫌いの問題ではなく、自分の人生と健康を守るための「合理的なリスク管理」の結果です。
今回は、私が鳥刺しを控えている理由と、その背景にあるリスク、そして周囲との付き合い方について、少し詳しくお話ししたいと思います。
1. UC患者にとって「カンピロバクター」は単なる食中毒ではない
鶏の生食において最も警戒すべきは、「カンピロバクター(キャンピロバクター)」という細菌です。
厚生労働省の統計を見ても、細菌性食中毒の発生件数で常に上位にランクインしており、その多くが加熱不十分な鶏肉によるものです。
健康な人であれば、数日間の激しい腹痛や下痢で済むかもしれません。
しかし、私のようなUC患者にとって、この細菌への感染は「地獄への入り口」になりかねません。
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感染性腸炎からの再燃: 細菌によって腸壁が傷つくと、それをきっかけに持病の炎症が爆発的に悪化することを懸念してしまいます。
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治療の複雑化: 「食中毒による下痢」なのか「UCの再燃」なのかの判別が難しくなり、適切な治療が遅れるリスクがあります。
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ダメージの深さ: 弱っている腸粘膜に細菌が侵入することで、重症化しやすく、入院を余儀なくされるケースも珍しくありません。
「一口だけなら」「新鮮だから」という根拠のない行動が、数ヶ月に及ぶ入院生活や、強い薬(ステロイドなど)の使用に繋がる可能性がある。そう考えると、私にとって鳥刺しを食べるメリットは皆無になり、現在は食べるのを控えています。
2. 「新鮮だから大丈夫」という誤解
30代になると、仕事の付き合いでこだわりの強い飲食店へ行く機会も増えます。
そこでよく耳にするのが「朝引きの新鮮な鶏だから、生でも安心だよ」という言葉です。
しかし、知っておかなければならないのは、カンピロバクターは「鮮度」とは関係がないという事実です。
この菌は鶏の腸内に当たり前に存在しており、解体過程でどれほど注意しても、肉の表面に付着する可能性をゼロにすることはできません。
つまり、どんなに新鮮であっても、生である限りリスクは常に存在します。
私は、この「鮮度神話」に惑わされないよう、自分の中に強い境界線を引くようにしました。
鶏肉を安全に食べる方法はしっかり加熱すること。これしかないのです。
3. 社会人として、付き合いの場でどう振る舞うか
30代男性のライフスタイルにおいて、周囲が盛り上がっている中で自分だけメニューを拒否するのは、勇気がいることかもしれません。
以前の私は「お腹が弱くて…」と曖昧にごまかしていましたが、最近ではより明確に、かつスマートに伝えるようにしています。
「実は腸に持病があって、主治医から生肉だけは厳禁と言われているんです。その代わり、このお店自慢の焼き鳥を誰よりも楽しませてもらいますね!」
このように、「医学的な理由(ドクターストップ)」であることを伝えつつ、別のメニューを楽しむ姿勢を見せることで、場の空気を壊さずに済みます。
意外にも、正直に伝えると周りの方は配慮してくれますし、「無理して食べて後で体調を崩されるよりずっといい」と理解してもらえることがほとんどです。
仲間外れにされることはまずないと思います。
4. 「安心」という最高のスパイスを楽しむ
「食べられないもの」があることを悲観的に捉える時期もありました。
しかし、今の私は「安心して食べられる喜び」に価値を置いています。
手間をかけて「100%安全で美味しいもの」を食べることは、食後の不安から解放されることを意味します。
この「心の平穏」こそが、UC患者(潰瘍性大腸炎の患者)にとってのQOL(生活の質)を支える大切な要素だと思うのです。
おわりに:自分の体の責任者は、自分だけ
潰瘍性大腸炎という病気は、目に見えないところで常に私たちの体にリスクをもたらしています。
その戦いを少しでも有利に進めるためには、自らリスクを招き入れない「賢明な選択」が必要です。
もし、今この記事を読んでいるあなたが、飲み会で鳥刺しを勧められて迷っているなら、どうか思い出してください。その一皿の味よりも、あなたの明日からの穏やかな日常の方が、何倍も価値があるということを。
これからも、自分のお腹を労わりながら、無理のない「暮らしのカタチ」を一緒に作っていきましょう。